市場に出回る牛肉の八割に、豚肉の七割に病変があり、一部廃棄、または全部廃棄になっていることは、農林水産省のホームページにも載っている事実ですが、そのことは、消費者にはあまり深刻には受け止められていないようです。それが証拠に、牛肉も豚肉も売れていますし、外食でもよく食べられています。深刻に受け止められていないのは、消費者がそのことを大した問題だと思っていないのか、あるいは情報そのものを知らないからなのか、そこのところはよくわかりません。
僕は以前から著書の中でも、また講演・セミナーなどでも、全食事量のうちの10%は動物性たんぱく質を摂ること、を提唱していますが、その動物性たんぱく質は、お肉でもお魚でもよく、むしろいろいろな食材を順繰りに食べる方が望ましい、と主張してきました。ただし、一時に、多種類の動物性たんぱく質を摂るのは、おすすめできない、とも言ってきました。だから、その日によって、今日はお魚にしようとか、牛肉を食べようとか、豚肉がいい、鶏肉を食べたいなどなど、選べばいいと思っています。もちろん、安全なものというのが最低条件ですけど。
どの動物性たんぱく質を選択するかは、自由ですけど、様々な意味から、安全性を考慮すると、牛肉にはあまり多くを期待できない、というのが僕の意見です。でも、僕は焼き肉屋を経営している友人も何人かいますし、彼らがお肉の安全性に最大限の気を遣っていることも知っているので、彼らのお店に行く時はまったく安心して牛肉をいただきます。とは言っても、それほどの量は食べないのですが。
以前、自分が経営していた、オーガニックレストラン・キヨズキッチンでも、牛肉のお料理はほんのたまにしか出しませんでした。安全が確保された牛肉が入った時には、牛肉を使ったお料理を出しましたが、常には入手できなかったからです。一年に一度、寒い時期に一週間「タンシチューウィーク」というのをやっていましたが、この仕入れはたいへんでした。安定的に、お店で出す一週間分の牛タンを確保するのは、並大抵のことではありません。このことで、当時、世田谷の経堂にあったお肉屋さんと大喧嘩になったこともあります。
僕のホームページ【 http://kiyo-san.jp/ 】のトップページに、「KIYO’sマルシェ」の案内があり、その下に「KIYO厳選!おいしいお野菜/お米/お魚をお届け」の案内があります。そこを見ていただくとお肉の不定期宅配の情報が載っています。先日、僕自身が産地を訪ね、安全を確認した豚肉と鶏肉を販売しました。以前から、ご要望があったのですが、なかなか、これぞ!という商品に出会うことができず、困っていた時に、素晴らしい生産者の方との出会いがあり、今回の販売につながったのです。「カネに糸目をつけねぇよ」というのなら話は簡単です。いくら高くてもかまわないというなら、そういうお肉はあるにはあります。でも、それは、日常的に家庭料理に使い続けることはできない。ということになると、安全性とともに確保しなければいけないのが経済性です。ほかにもいろいろと条件があり、それらをすべてクリアしたのが先日販売した「走る豚」と、「天草大王」というわけです。
牛肉、豚肉も同じですが、安全な鶏肉というのもなかなかないというのが現状です。価格が信じられないほど高かったり、肝心のお肉がえらく硬かったりして、どれも皆さんにおすすめできるような代物ではありませんでした。おいしくて、食べられる硬さで、安全な鶏肉を探し続けていて、ようやく「天草大王」の生産者にたどりついた、という感じです。
遺伝子組み換えの飼料は使わず、鶏たちを健康に育てるというポリシーを守っているので、生産量が限られています。そのうちの一部を分けていただき、今回の販売が実現しました。
宅配のパックには、もも肉2、ムネ肉2、手羽2、ささ身2と入っているわけですが、これは要するに一羽分、ということです。そういう売り方しかできないと生産者が言うのです。
正直言って、どうなんだろ、これは、と思いました。みんなふつう、もも肉3枚とか、手羽10本とか、買うんだろうな、僕もそうだし。こんな売り方で、買ってくれる人、いるのかしら、と思いつつ、でも、こういう安全なお肉をほしいと思っている人もいるはずだから、やるだけやってみよう。売れなかったら、ぜんぶ、僕が引き取って、冷凍にしておいて、全食事量の10%を超えない程度に、毎日食べればいいや、という覚悟のもとに販売しましたら、あっという間に完売。皆さんからの反響も、おいしかった、ほんとうの鶏肉の味がわかった、次回も必ず注文する、とうれしいお声が届き、一安心した次第です。
遺伝子組み換えの問題に関しては、生産者側は慎重で、そのことを表明したくないとのことでした。どうしてかというと、今後、遺伝子組み換えの飼料が混入することが考えられ、その時に遺伝子組み換えを使用していないと表明していると虚偽になるから、ということでした。しかし、今は、彼のところでは遺伝子組み換えは0%だそうです。
そんな貴重な鶏肉なので、次回、販売する時には、ぜひ、お買い求めいただきたいです。
そして、おいしいお料理を作って、召し上がっていただきたいです。
ナチュラルエイジングを提唱するフードプロデューサー
KIYO(南 清貴)Official WebSite
http://kiyo-san.jp/wordpress